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少年非行を考える上で読みたい本ー寮美千子「あふれでたのはやさしさだった」

2020年8月14日

自分の仕事柄、非行少年をネット検索していて、クリックしたのが『少年刑務所で9年間教えた作家が見た「心の中」、奈良の刑務所で出会った少年たちの"本質"』東洋経済オンライン(2019年4月13日)の記事でした。

記事の内容は、作家、寮美千子さんは奈良少年刑務所で情緒教育の講師をされていた時のお話です。最初は少年刑務所で働くことに怖さを感じていた寮さん。絵本や詩をつかって受刑者たちの心の奥にあるものを引き出していきます。その中で受刑者たちの優しさ、人柄にふれ、ご自身の人間観や世界観まで変わっていったというものです。この記事を読んで、私も胸が詰まりました。少年非行について一歩理解が深まった気がします。たくさんの方に読んでいただきたい内容です。

こちらでは寮さんの奈良少年刑務所での経験を書かれた書籍を紹介します。

寮美千代『あふれではのはやさしさだった 奈良少年刑務所 絵本と詩の教室』(西日本出版社、2018年)

 

みんなやさしかった

絵本や詩の力はすごい。

少年たちは絵本の朗読で自分を表現し、詩を書いて、心の内を吐露する。

それを誰かが受け止めてくれる。それだけで鎧がはずれ、本来の自分に戻っていく。

受講生が作った詩は、たった1行のなかにも奥深さがあって、想像もしえない想いが詰まっています。

また、仲間の作品に対する他の受講生たちの言葉がやさしい。

やさしい慰め、やさしい共感。

それは奇跡ではなく、回を重ね、メンバーが変わっても同じだったといいます。

少年刑務所の教官たち

受講生が朗読の時間に「ぼく、できません」と言った時の対応、

「そっか、できないか。よく言ってくれた!やらなくてもいいよ」

叱ったり、励ましたりしない。受け止めてあげること、寄り添ってあげることが大切。

彼らを「評価」しない。褒めることも彼らの心の傷を作る。

「よく書けているね」というのではなく、「わかる、わかる」、「先生もそう思うわ」という感じ。

さらっと受け止める感じ、「オッケー」。

「待つ」、指導者は受講者を急がせない。

感想

少年刑務所にいる人がどんな少年なのか、外からはわかりません。

虐待、育児放棄、貧困など、追い詰められるほどのつらい想いをしてきたことがわかります。

何の背景もない少年が刑務所に来ることはないといいます。

子どもの福祉を充実させること、学習のつまずきに対する支援、

気になる子がいたら、何に困っているのか理解することが大切だと思います。

そうすれば、少しでも少年犯罪を減らすことができるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • この記事を書いた人

リリィ

36歳で大学生、50歳で博士号(社会科学)を取得。職業は非常勤講師、リサーチャー、手相鑑定士。趣味は読書。自分の持てる力を発揮して、社会に貢献できる生き方を模索中です。

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